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sidewalkcafe blog

日々是好日

記憶に遺る言葉

誕生日の朝、パソコンには彼女からのメッセージが


「好きでいてくれてありがとう」


その言葉を最後に、彼女は去って行った
僕の前から


永遠に



たった4行、最後のメッセージ
誕生日を祝う言葉と一緒にこの言葉があった


彼女はどんな気持ちでこのメッセージを残したのだろう
病魔に蝕まれた身体で
動かすことさえ苦痛を伴う指で
眠ってしまったらもう二度と目を醒まさないかもしれない意識の中で


僕はこのメッセージに応えることができただろうか
答えを見つけ出せただろうか
どれくらい彼女の居る場所に近づいただろうか



僕はただ、逃げた
インターネット上の別の場所に
新たな名前を手に入れ
新たな自分を造り上げ
新たな仲間に囲まれて


この悲しみは自分のものではない
この悲しみは誰のものでもない
僕は悲しくなんかない
仮面をつけて笑う自分
笑い声の中心に居るはずなのに
独り取り残される


みんなの輪から一歩引いてかまえている僕
楽しそうに話す友人達


・・・友人?



否、


否否否否否否





もう出会いはいらない
別れるのが辛い
独りぼっちは寂しい


判り合えなくても良い
上辺だけの関係で十分だ
だから僕の前から去って行こうとかまわない


たとえ僕の周りに一人も居なくなっても
また新しい僕を造ればいい
僕でない僕、新しい自分


自分を演じるのには慣れている
ずっと昔からそうしてきた


本心を隠し
仮面を変えるだけで違う私
こんにちは、僕でない私
私でない僕
悲しんでる僕
僕と私は違うから、私は悲しくなんてない





「本当に?」



誰かの声が聞こえた気がした


「好きと言った言葉も嘘?」




ごめんなさい
違うんです、違うんです、そうじゃないんです
嘘じゃない、嘘をついた訳じゃない、嘘なんかつくつもりはなかった
僕が、私が好きだと言った言葉は、嘘偽りない本心だった


好きだった、本当に
心の底から好きと言えた
いつも想いを告げずに終わった恋も
彼女と出会って変わった
自分から、自分の心の内を語った


ただそれだけに
理不尽な終わり方が赦せなかった
自分が許せなかった
傷つく事を避けていた自分が嫌だった
もうどうなっても良いとさえ思った
だけど自殺だけは考えたくなかった
それは望まず死んで逝く者に対する冒涜だから


壁をおもっきり殴った
机を力一杯殴った
いつも何に対しても遠慮していて、本気を出せなかった自分が
後先を考えず行動する


右腕が痛い
僕は 馬鹿だ


幸せになりたいと思った
幸せにならないといけないと
彼女の分迄幸せになってやろうと思った


相変わらず馬鹿だった


誰かの為に幸せになるんじゃない
それは自分の為でしかない事に気付かされる


自分の為に、幸せを見付ける


それは至極当たり前の事だと思えた




幸せになりたい



心の中から、本当にそう思う
幸せを見付ける事
幸せを探す事
幸せに辿り着く迄の過程
それもまた、幸せのひとつの形なんだろう


これからどんな事が待っているだろう
まだ見ぬ未来
何が起こるか判らないけれど
僕自身どうなるか判らないけれども
明日を楽しみに行きて行く


だから僕は誰に聞かれてもこう答える


「幸せですか?」



僕は幸せ者です。